あんよね。

片面印刷チラシの裏みたいなもの。

親とは。

我が家の問題児だった私。

どこかに本当の両親がいるに違いないと逃げ道を探していた。
小学校にあがる前の話である。
ある日、家出を敢行。バスを乗り継ぎいざ、よその家へ!
お子なので、行き先は限られる。
まずは、従姉弟のミッキーの家を目指す保育園児。
バスの乗り方も様になっている。
しかし、しばらく外を流れる風景を見つめるうち

ち、ちがうかも・・・。

(見覚えのない景色が窓の外には流れる)

間違えたかも・・・。

(修正するなら、早いほうが良いとささやきが聞こえる)

次のバス停で下車する。保育園児。
心配げに声をかける運転手。

お迎えの人はいるのかい?

あい。その角にいます。

親切な運転手にウソをつく保育園児。
ここが問題児といわれる所以である。おそろしい。

途方にくれる保育園児。
とりあえず、バスが来た道を違う道に入った三叉路まで
歩きだす。

やっとこ、三叉路まで辿りつく。

右に行けば、我が家。まっすぐ行けばミッキーの家だ。
でも、どちらも保育園児の足ではとても遠い。

心身ともに疲れていた保育園児。
帰巣本能というべきか、右に曲がる。


トボ。トボ。トボ。

 

前方からトラックが走ってくる。
保育園児の横をゆっくり通り過ぎ
少しバックしてから止まった。


乗りなさい。


父だった。怖い顔をしていた。
開いた助手席のドアを手をついてジャンプしてよじ登った。


うちじゃいかんとか?


ゆっくりと父が言った。
保育園児は、とてもとても悪いことをした気持ちになった。
涙がでてくる


ごめんなさい。


下をむいたまま言うと父に頭をぐりぐりされた。

 

保育園児は、それから
本との両親妄想を抱かなくなった。

 

ご苦労様です。父母さま。